未完成の言葉の欠片 / ※印は要注意orネタバレ / 二次はクリア後前提です
[PR]
2026.04.04 Saturday
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
万華鏡(3)
2005.05.27 Friday
そういう生活が更に三年続いた頃、彼らの前にひとりの訪問者が現れた。
「イルマ・フローエ様のお宅はこちらで宜しいですか?」
学校帰り、アパートの部屋の前に見知らぬ男が立っていた。鍵を取り出そうとしたユージィンに気付き軽く会釈したのち、号数の表示を手元の小さな紙片と見比べるようにして彼は言う。フロックコートを身に着けた、やけに身なりのいい、落ち着いた初老の紳士だった。言葉遣いも礼儀正しく下町訛りがない。
「イルマ・フローエ様のお宅はこちらで宜しいですか?」
学校帰り、アパートの部屋の前に見知らぬ男が立っていた。鍵を取り出そうとしたユージィンに気付き軽く会釈したのち、号数の表示を手元の小さな紙片と見比べるようにして彼は言う。フロックコートを身に着けた、やけに身なりのいい、落ち着いた初老の紳士だった。言葉遣いも礼儀正しく下町訛りがない。
万華鏡(2)
2005.05.26 Thursday
初めて『父』と呼ぶべき相手ができたのは、基礎学校(グルント・シューレ)の五年に上がった頃のことだ。三十手前の、学者肌を感じさせる男だった。帝都の大学出だというから、頭は良かったのだろう。イルマの働くカフェの常連で、そこで彼女を見初めたらしい。最初は躊躇っていた母も、彼の熱意に絆されてやがて求婚に応じたようだ。母はまだ充分年若かったし、子供がいること以外は特に問題もなかったからだ。
万華鏡(1)
2005.05.25 Wednesday
彼が生まれたのは東領(カルディナ)の南端、ベルトラムという名の海沿いの町だった。ちょうど皇帝夫妻に一人目の皇子が誕生し、国中がその祝いに賑わっていた年の秋のことである。
ベルトラムは南領(ミルザス)に隣接しており、田舎町ではあるが外洋に近く風光明媚な土地柄で知られている。帝国貴族の別荘地としても挙げられるほどだ。とはいえ夏の観光の時期だけ都会から人が訪れる、その他は多少の海産物しか名物のない寂れた小さな町だった。住民の多くは顔見知りで、彼らは夏場には貴族の邸宅で下働きとして仕え、それ以外の季節は畑を耕したり漁に出たりする。
ベルトラムは南領(ミルザス)に隣接しており、田舎町ではあるが外洋に近く風光明媚な土地柄で知られている。帝国貴族の別荘地としても挙げられるほどだ。とはいえ夏の観光の時期だけ都会から人が訪れる、その他は多少の海産物しか名物のない寂れた小さな町だった。住民の多くは顔見知りで、彼らは夏場には貴族の邸宅で下働きとして仕え、それ以外の季節は畑を耕したり漁に出たりする。
| top |
|
|