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未完成の言葉の欠片 / ※印は要注意orネタバレ / 二次はクリア後前提です
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いちかとかずい
「ねえさま、ねえさま」
 聞き慣れた声が囀るように口にしたのは、耳慣れぬ音の響きだった。
「……かずい。どうしたの、急に」
 わたしはその主を振り返る。視線の先にいた少女は、わたしと同じ顔をした、双子の、妹。ふたつに分けた三つ編みのお下げ髪がふわりと揺れる。
 かずいはわたしと容姿を揃えたがるけれど、軍の施設に入ってからこちら、髪形だけは分けるようにしている。そうでもしなければ、一度二度しか言葉を交わしたことのない軍の人間がしばしばわたしたちを取り違えるからだ。
 大陸方面への再度の先端拡大に伴って、軍部は、かつては護国の鍵として各地の社の中に置かれてきた導術士――西洋風に言う『マギ』――の軍での育成に力を入れ始めた。わたしたちもその一員として、この施設に集められている(表向きには協力している、という立場だ)。西洋諸国ではわたしたちと同じ年頃の娘が正規の軍人として扱われているという。優れた者では戦艦一隻にも匹敵するという能力。わたしたちは今は単なる軍属の身分だけれど、そのうち、と思う。
 二本の三つ編みがかずい、一本がわたし。というのが暗黙の了解だ。(もっとも、最近はわたしの負傷が多い所為で、もうひとつの識別ができてしまったけれど)
 時折、かずいはわたしの振りをして研究所付きの軍人たちを揶揄っているようだ。だが、わたしにはそこまでの愛嬌はない。
「わたしたちは双子なのだから、姉だなんて呼ぶ必要はないのに」
 それを『姉様』だなんて勿体振った呼び方。今まではずっと『いちか』と名前で呼ばれでいたのに、その分だけ距離ができたような気がした。
 思わず、咎めるような口調になっていたかもしれない。しかしかずいは不思議そうに小さく首を傾げただけだった。口許にうすらと浮いた笑み。宵色の瞳が幾度か瞬いて、改めてわたしの姿を映す。
 そして彼女は、指先でわたしの首筋に巻かれた繃帯をなぞりながら言うのだった。
「だって、ここにいると皆がいちかの名前を呼ぶのだもの。でもいちかを『ねえさま』と呼べるのはかずいだけでしょう?」
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