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未完成の言葉の欠片 / ※印は要注意orネタバレ / 二次はクリア後前提です
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旋光:贅沢な世界
センコロ、ミカとファビアン。メトロからサルベージしてきましたが何のことはない単なる膝枕話。
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旋光:リリED+ミカED+妄想
「ミカッ!」遠くから呼び声。
 ああ懐かしい響きだ、と現実から隔絶された思考の片隅で思う。薬の効果で緩やかに鈍く融けていった痛みと引き換えに、意識は今一つ覚醒しきらない。波音、浜辺を蹴る靴の先、穂波の色の髪。五感に認めるものも、地球の大気に拡散するように何処かちぐはぐで。
 傍らには少女のかそけない体温がある。柔らかな桃色の毛先が触れる。微かな鼓動。けれど確かに繋ぎ止められている。
 墜ちたランダー。ヴェントゥーノとブリンスタ。秘密裏に開発された兵器。能力強化の少女。暴走したリリ。破壊。
 面を上げる。いつの間にか、声の主はすぐ側まで来ていた。苛立ちを含んだ翠色の瞳に見下ろされる。なにしてんだ、と、険と安堵の綯い交ぜになった台詞。
 彼は答える。
「動けないんだ。……脚、折れたみたいで。鎮痛剤は打ったんだけど」
 その代わりに感覚がない。ちっ、と舌打ちしてファビアンは顔をしかめる。
「リリは」
「生きてる」
「女が先。おまえはそこでじっとしてろ」
 彼は自分を指差して厳命する。そして細い少女の肢体を軽々と、けれど壊れ物を扱うかのように繊細に両の腕で抱き上げた。
 優しいな、と思う。悪ぶった容姿とは裏腹。気分がよくなって、少しだけ笑って答えた。「アイ・サー」
 急ぐ後ろ姿を見て思う。色々ないがしろにしたというのに、こうして自分のことまで助けにきてくれる。きっと誰にだってそうだ。それでも。
 そんな風に好かれる資格なんて、俺には。
(ないと思うんだけどなあ……)

「おい、こら。待ってろとは言ったが寝てろとは誰も言ってねえだろうが」
 波打ち際に闇色の繊い髪が零れている。浜辺に仰向いたミカの、頭の先でファビアンは軽く砂を蹴った。予備動作もなく彼はぱちりと眼を開く。昏い深海の色。虹彩が微かに巡って、自分を見た。色付きの硝子玉みたいな、感情の薄い瞳だ。
 起き上がりもせず、ミカは黙ってじっとこちらに視線を注いでいる。軍服もファーも髪も、全て砂塵塗れだった。
 そしてすぐ足下まで海水が迫っている。潮が満ちてきたのだろう。彼らが住む月の、不思議な引力。
「波に飲まれんぞ、そのうち」
「迎えにきたのが君でよかった。父さんと母さんが来たのかと思ってた」
 表情も変えず、淡々とミカは口にする。
 彼が幼い頃に死んだ両親。彼の行動のきっかけであり、もはや現世には存在せざる人々。つまり死そのもの。その喩えは悪趣味だ。
「ふざけたこと言うな」

「俺を呼べばいいだろ。何処に墜ちても、見つけてやるよ」
 
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