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未完成の言葉の欠片 / ※印は要注意orネタバレ / 二次はクリア後前提です
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鳴神
 ある初夏の一日。
 例年にない規模の雷雨に見舞われ、帝都は陰鬱な日を迎えることとなった。太陽は一度も空に顔を見せぬまま厚い雲の向こうに隠れ、辺りに立ち籠めるのはただ暗闇のみ。降りしきる雨の所為で気温も下がり、この季節には珍しいほどひんやりとしている。お陰で過ごし易いといえばそうなのだが、むしろ肌寒さを感じるほどでありがたくはない。
 夜が更けても雨はやむ気配を見せず、逆にその激しさをいや増すばかりだった。
 大粒の雨が窓の硝子(ガラス)を叩く音。厚いカーテン越しにも稲妻の迸(はし)る様子が見て取れる。昏(くら)い夜空を灼く閃光(ひかり)に続き、ほんの僅かな時間差で轟音が鼓膜を突いた。何処かに落ちたかもしれない。
「雷、とおくならないね」
 眠れない様子で熾己が言う。
 もう一時間は前にベッドに入ったというのに、眩しい稲光と轟く落雷の音に目が冴えるばかりで寝付けないようだった。貴石のような緋色の眼をぱっちりと開いて、少年は天蓋を見つめている。相変わらず瞼は落ちない。
 ずっとそんな調子で、時折ぽつりぽつりと言葉を交わすものの、余計に眠れなくなっては困るので会話には発展しなかった。
「母上は雷がにがてなの」ふと、思い出したように熾己が口にする。「だいじょうぶかな」
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