未完成の言葉の欠片 / ※印は要注意orネタバレ / 二次はクリア後前提です
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2026.04.04 Saturday
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旋光:贅沢な世界
2007.06.24 Sunday
センコロ、ミカとファビアン。メトロからサルベージしてきましたが何のことはない単なる膝枕話。
================================================
「ファビアン、ちょっと頭貸してほしいんだけど」
すれ違いざまの唐突な一言。呼び止められ、通りすぎかけた彼は振り返る。
「は?」
「手伝ってほしいことがあるんだ。手が空いたら俺の部屋に来てもらってもいいかな」
何を、とはミカは特に言わない。しかし、大概のことを自分独りでやりたがるミカの頼みなんてたかが知れてるし、言葉が足りなくてよくわからないのも――小隊長の癖に――いつものことだ。だから今回も軽い気持ちで請けてやる。
「……別に構わねぇけど」
「ありがとう、助かるよ」
ほんの少し晴れやかな顔をして、彼は手を上げて応えると去っていった。シミュレータ訓練が終わって、今から隊の報告書でも書きにいくのだろう。その後ろ姿を見送ってからふと気付く。
頭? 何だ? 何か問題でも起きたのか?
首を傾げながらミカの最初の言葉を反芻し、ファビアンは元どおりに通路を歩き始めた。
「そこに座って」
自室を訪った彼に対し、簡潔に言ってミカはベッドの端を指差した。
「?」
疑問符を浮かべつつ、ファビアンは指示されたとおりの位置に腰を下ろす。やわらかいベッドのスプリングが彼を受け止める。
座り慣れた場所から見る室内は、どちらかというと殺風景。若年の士官用に与えられた間取りの同じコンドミニアムであるけれども、自分の住まいとは違い、彼の部屋は必要なものだけがバランスよく配置されたところだった。ミカらしいといえばそうなのかもしれない。温度も湿度も低いような、静かな空間。
そうしてぼうっと観察していると、突然背後から伸ばされた両の掌が、ぴたりと自分の頭の横に張り付いた。かと思ったら、ぐい、とそのまま後ろに躰を引き倒される。束の間天井を仰いだ。押さえつけられた後頭部、柔らかい布地の感触越しには微かな人間の体温。ミカの脚だ。予想だにしない彼の突然の行動に、思わず目を大きく見開いて更にぱちぱちと瞬きを数度繰り返す。
「……って、何しやがるっ!」
我に返り跳ね起きようとしたものの、無理矢理頭を膝の上に戻された。見下ろしてくる二つの瞳は、前髪の陰になって暗い闇色に見えた。
「アーネチカがしたがるんだけど、重くないのかなと思って」
「それノロケ?」
「ん?」
返されるのは首を傾げるポーズ。何処まですっとぼけた奴なんだ。
「……おまえに言っても無駄か……つーか男に膝枕して楽しいか? 俺はされても全然楽しくないぞ」
「実験だから楽しい楽しくないは関係ないよ」
正座した膝の上、逃げないように両脇から頭部を押さえつけられる。もはや観念してされるがままになっておいた。彼は言う。
「やっぱり人の頭って重いな」
「それは俺の脳味噌が詰まってるから」
「あはは」
「笑うなコラ」
面に張り付いたわざとらしい笑顔に、腕を伸ばして額を小突く。失礼極まりない。
前触れもなく、細い指が髪に絡む。くすぐったくて思わず笑ってしまう。まるで小さな子供に対するかのような仕種だった。彼の濃色の髪とは正反対の、淡い色の自分のそれ。「猫みたい」癖のある前髪を無意識のように撫でられて、更に横になっている所為もあり途端に睡魔が襲ってくるような気がする。瞼が降りそうになる。
「眠くなってきた?」
落とされる、やわらかい笑み。繊い髪が緩く顔の輪郭を覆う。
不意に、意外なものを見たような気分になった。
「おまえ、そういう風にも笑うんだな」
そう言った瞬間、ミカは驚いた様子で表情を凍りつかせる。動揺したように言葉を失った彼は、唇を引き結んで顔を背けてしまう。しばらく間を置き、そして一言ぽつりと。
「自分の顔なんて自分じゃ見えない」
ミカは小さく口にした。
そのサイドで揺れる黒髪を、もう一度手を伸ばしてぎゅ、と引っ張る。引き寄せられ、否応なしに顔を近づける形となって、彼が目を瞠るのがわかった。「誤魔化さなくてもいいだろ、別に」
「誤魔化してなんか」
「なにが不本意なわけ?」
「……今のは俺の意識の範疇じゃない」
「ふうん」
ま、いいけど、とファビアンは呟いて、掴んでいた髪を放す。するりと指の間を抜ける糸。ミカがそう頑なに言い張るのは滅多にない。よほど不覚を取ったと思っているのだろう。今日は物珍しいことだらけだ。
「…………ねむい」
「ちょっ……ファビアン、降りて」
「おまえが乗せたんだろ。責任取れ」
右腕を目許に当てて天井からの光を堰く。困ったような声が耳に届く。けれどそれを拒否して彼は翠色の瞳を閉じた。
「ファビアン、ちょっと頭貸してほしいんだけど」
すれ違いざまの唐突な一言。呼び止められ、通りすぎかけた彼は振り返る。
「は?」
「手伝ってほしいことがあるんだ。手が空いたら俺の部屋に来てもらってもいいかな」
何を、とはミカは特に言わない。しかし、大概のことを自分独りでやりたがるミカの頼みなんてたかが知れてるし、言葉が足りなくてよくわからないのも――小隊長の癖に――いつものことだ。だから今回も軽い気持ちで請けてやる。
「……別に構わねぇけど」
「ありがとう、助かるよ」
ほんの少し晴れやかな顔をして、彼は手を上げて応えると去っていった。シミュレータ訓練が終わって、今から隊の報告書でも書きにいくのだろう。その後ろ姿を見送ってからふと気付く。
頭? 何だ? 何か問題でも起きたのか?
首を傾げながらミカの最初の言葉を反芻し、ファビアンは元どおりに通路を歩き始めた。
「そこに座って」
自室を訪った彼に対し、簡潔に言ってミカはベッドの端を指差した。
「?」
疑問符を浮かべつつ、ファビアンは指示されたとおりの位置に腰を下ろす。やわらかいベッドのスプリングが彼を受け止める。
座り慣れた場所から見る室内は、どちらかというと殺風景。若年の士官用に与えられた間取りの同じコンドミニアムであるけれども、自分の住まいとは違い、彼の部屋は必要なものだけがバランスよく配置されたところだった。ミカらしいといえばそうなのかもしれない。温度も湿度も低いような、静かな空間。
そうしてぼうっと観察していると、突然背後から伸ばされた両の掌が、ぴたりと自分の頭の横に張り付いた。かと思ったら、ぐい、とそのまま後ろに躰を引き倒される。束の間天井を仰いだ。押さえつけられた後頭部、柔らかい布地の感触越しには微かな人間の体温。ミカの脚だ。予想だにしない彼の突然の行動に、思わず目を大きく見開いて更にぱちぱちと瞬きを数度繰り返す。
「……って、何しやがるっ!」
我に返り跳ね起きようとしたものの、無理矢理頭を膝の上に戻された。見下ろしてくる二つの瞳は、前髪の陰になって暗い闇色に見えた。
「アーネチカがしたがるんだけど、重くないのかなと思って」
「それノロケ?」
「ん?」
返されるのは首を傾げるポーズ。何処まですっとぼけた奴なんだ。
「……おまえに言っても無駄か……つーか男に膝枕して楽しいか? 俺はされても全然楽しくないぞ」
「実験だから楽しい楽しくないは関係ないよ」
正座した膝の上、逃げないように両脇から頭部を押さえつけられる。もはや観念してされるがままになっておいた。彼は言う。
「やっぱり人の頭って重いな」
「それは俺の脳味噌が詰まってるから」
「あはは」
「笑うなコラ」
面に張り付いたわざとらしい笑顔に、腕を伸ばして額を小突く。失礼極まりない。
前触れもなく、細い指が髪に絡む。くすぐったくて思わず笑ってしまう。まるで小さな子供に対するかのような仕種だった。彼の濃色の髪とは正反対の、淡い色の自分のそれ。「猫みたい」癖のある前髪を無意識のように撫でられて、更に横になっている所為もあり途端に睡魔が襲ってくるような気がする。瞼が降りそうになる。
「眠くなってきた?」
落とされる、やわらかい笑み。繊い髪が緩く顔の輪郭を覆う。
不意に、意外なものを見たような気分になった。
「おまえ、そういう風にも笑うんだな」
そう言った瞬間、ミカは驚いた様子で表情を凍りつかせる。動揺したように言葉を失った彼は、唇を引き結んで顔を背けてしまう。しばらく間を置き、そして一言ぽつりと。
「自分の顔なんて自分じゃ見えない」
ミカは小さく口にした。
そのサイドで揺れる黒髪を、もう一度手を伸ばしてぎゅ、と引っ張る。引き寄せられ、否応なしに顔を近づける形となって、彼が目を瞠るのがわかった。「誤魔化さなくてもいいだろ、別に」
「誤魔化してなんか」
「なにが不本意なわけ?」
「……今のは俺の意識の範疇じゃない」
「ふうん」
ま、いいけど、とファビアンは呟いて、掴んでいた髪を放す。するりと指の間を抜ける糸。ミカがそう頑なに言い張るのは滅多にない。よほど不覚を取ったと思っているのだろう。今日は物珍しいことだらけだ。
「…………ねむい」
「ちょっ……ファビアン、降りて」
「おまえが乗せたんだろ。責任取れ」
右腕を目許に当てて天井からの光を堰く。困ったような声が耳に届く。けれどそれを拒否して彼は翠色の瞳を閉じた。
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