未完成の言葉の欠片 / ※印は要注意orネタバレ / 二次はクリア後前提です
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2026.04.04 Saturday
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04/11/06
2004.11.06 Saturday
「プラネタリウムに行きたい」
そんな言葉と共に、ぱっ、と目の前に広げられた記事。それは帝都(ルクス)郊外のアミューズメント施設を特集したものだった。
ルクスの市街は、帝城を基点として扇型を描くように広がっている。中心部には将軍家や貴族を始めとした上流階級の屋敷があり、それを取り囲むように堅固な外壁が築かれている。その外が一般市民の居住地だ。比較的裕福な者ほど城に近い区域に居を構えている。更に郊外との境界にも外壁が聳え立ち、古くは帝都を外敵から二重に護る役目を果たしていた。
熾己が指した記事に載っていたのはその郊外の西地区、ツァイス・フォーラ辺りにある科学館である。先月改装されたばかりで、新しく併設された別館に本格的な〈天象儀(プラネタリウム)〉が設置された。
(プラネタリウム、ねえ……)
初めて聞く言葉だったが、要するに部屋のに中に夜空を作り出すものらしい。天球面の現象を投影機で室内のドームに写して、天体の運行を擬似的に見せる装置だと解説には書かれている。
東領(カルディナ)で開発されていたものを帝都に移送したようだ。東領北部は技術革新の目覚ましい地域で、クローデル市には世界で最初のプラネタリウムが存在するという。ツァイス・フォーラのものはその改良型で、試作段階であったクローデルのものに比べ、より高度な投影が可能となっている。
真昼間から夜の星が見られるということで、子供から大人まで人気になっているそうだ。
(地上に星空を。――白日の中に夢をお見せします)
――とそこまで記事の文字列をつらつらと読み進めて、ヴァルトははた、と動きを止めた。その雑誌の出所は一体何処なのだ。城の外にそうそう出ることのできない熾己が、そんなものを簡単に手に入れられるはずがない。
「何処から拾ってきたんだ?」
「これ? 女官のお姉さんにもらった。僕が欲しいって言ったら、くれるって」
当たり前のような口調でなされた熾己の返答に、ヴァルトは軽い頭痛を覚えた。眉を顰め、額を押さえて俯く。そんな雑誌を欲しがる熾己にも問題があるが、渡す方も渡す方だ。
彼は熾己から雑誌を取り上げて、首を横に振った。
「駄目。却下。それにこういうものは読んじゃいけない。これからは絶対にねだるなよ」
「どうして?」
「駄目なものは駄目なの」
そんな風に諭されて、不服そうに熾己は唇を尖らせる。
「理由になってない!」
「そうは言ったって、どうせ外なんか出られないだろ。一人じゃ何処にも行けないくせに。迷子になって攫われるぞ」
「そんなことないよ!」
「そんなこと充分あるんだってば」
どうも危機感が薄い末の皇子に、ヴァルトも多少呆れ気味だ。何処にでもいるような、決して目立つ容姿ではないが、彼の有する特別な緋色の睛で誰だかすぐに見破られてしまう。
そんな言葉と共に、ぱっ、と目の前に広げられた記事。それは帝都(ルクス)郊外のアミューズメント施設を特集したものだった。
ルクスの市街は、帝城を基点として扇型を描くように広がっている。中心部には将軍家や貴族を始めとした上流階級の屋敷があり、それを取り囲むように堅固な外壁が築かれている。その外が一般市民の居住地だ。比較的裕福な者ほど城に近い区域に居を構えている。更に郊外との境界にも外壁が聳え立ち、古くは帝都を外敵から二重に護る役目を果たしていた。
熾己が指した記事に載っていたのはその郊外の西地区、ツァイス・フォーラ辺りにある科学館である。先月改装されたばかりで、新しく併設された別館に本格的な〈天象儀(プラネタリウム)〉が設置された。
(プラネタリウム、ねえ……)
初めて聞く言葉だったが、要するに部屋のに中に夜空を作り出すものらしい。天球面の現象を投影機で室内のドームに写して、天体の運行を擬似的に見せる装置だと解説には書かれている。
東領(カルディナ)で開発されていたものを帝都に移送したようだ。東領北部は技術革新の目覚ましい地域で、クローデル市には世界で最初のプラネタリウムが存在するという。ツァイス・フォーラのものはその改良型で、試作段階であったクローデルのものに比べ、より高度な投影が可能となっている。
真昼間から夜の星が見られるということで、子供から大人まで人気になっているそうだ。
(地上に星空を。――白日の中に夢をお見せします)
――とそこまで記事の文字列をつらつらと読み進めて、ヴァルトははた、と動きを止めた。その雑誌の出所は一体何処なのだ。城の外にそうそう出ることのできない熾己が、そんなものを簡単に手に入れられるはずがない。
「何処から拾ってきたんだ?」
「これ? 女官のお姉さんにもらった。僕が欲しいって言ったら、くれるって」
当たり前のような口調でなされた熾己の返答に、ヴァルトは軽い頭痛を覚えた。眉を顰め、額を押さえて俯く。そんな雑誌を欲しがる熾己にも問題があるが、渡す方も渡す方だ。
彼は熾己から雑誌を取り上げて、首を横に振った。
「駄目。却下。それにこういうものは読んじゃいけない。これからは絶対にねだるなよ」
「どうして?」
「駄目なものは駄目なの」
そんな風に諭されて、不服そうに熾己は唇を尖らせる。
「理由になってない!」
「そうは言ったって、どうせ外なんか出られないだろ。一人じゃ何処にも行けないくせに。迷子になって攫われるぞ」
「そんなことないよ!」
「そんなこと充分あるんだってば」
どうも危機感が薄い末の皇子に、ヴァルトも多少呆れ気味だ。何処にでもいるような、決して目立つ容姿ではないが、彼の有する特別な緋色の睛で誰だかすぐに見破られてしまう。
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