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未完成の言葉の欠片 / ※印は要注意orネタバレ / 二次はクリア後前提です
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10-5(1)
「今日は一体どうしたの」
「あっ、熾己様」
 扉の開く音とともに声がした。続いて姿を現した熾己に、キースは今度こそ体ごと向き直ってお行儀よく正座。ぴんと背筋を伸ばし、叱られ待ちのようにも見える。もはや目にするのも幾度目かの水浸しの彼と廊下の状況、恐らく想像に違(たが)わなかったのだろう、熾己がひとつ嘆息をついた。
「僕の名前が聞こえたから、出てきたよ」
 彼の、若干抑揚の弱い話し方が、こういう時はやけに冷たく聞こえる気がする。それについてはキースも同感だったようで、面持ちが少々強張った。
 それでも、熾己はこの同年代の少年の無謀なる挑戦を一度も咎めてはいない。生身の身体能力で何処まで水精に臨めるものか、意外と記録を楽しみにしているのかもしれない。
「殿下、どうなさいました」
 やはり外の様子が気になるのか、部屋の奥からシェリルの声が聞こえた。キースが僅かに目線を上げる。
「あれ、先客(おきゃくさん)がいました?」
「うん」
 マクレーン中尉、と熾己が言うや否や、キースは飛び跳ねるように慌てて立ち上がり、ぴしりと挙手礼を取った。『中尉』という単語に反応したのか、赤髪の女性将校が完全に扉の前に姿を現すか現さぬかというタイミング。ほとんど反射的といってもいい行動だった。同時にアシュレイも姿勢を正し右腕を持ち上げる。きっと、身に染みついた習性なのだろう。
 彼らを前に、シェリルは当たり前のような仕種で自然と答礼をし、それから一調子ほど遅れて眼前の光景に対して不思議そうに双眸を瞬かせた。何故、全身濡れ鼠の少年に律儀に敬礼をされているのか。しかも熾己ではなく彼女の方が。
 その状況をいつもどおりに表情のわかりにくい目で眺めながら、熾己が細い声でぽつり、と言う。
「僕にももっと敬意を持った方がいいと思うよ」
 その言葉に、キースが「ひっ」と短い悲鳴を上げた。
「えっと、冗談」
「熾己様の冗談はわかりにくいですよー」
「ごめん」
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