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未完成の言葉の欠片 / ※印は要注意orネタバレ / 二次はクリア後前提です
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04/03/19の続き
 急いで靴を履き、夜着の上に毛織のガウンを羽織っただけの格好で部屋を飛び出した。長い廊下を走り抜ける間、誰にも見咎められなかったのは幸いだ。急いで階下に降り、更に外に足を踏み出す。内苑はきらめくような純白の雪で埋め尽くされている。真冬の外気は冷たく、身を切る寒さにもかかわらず、全身は上気してむしろ暖かいくらいに感じられた。慣れた足取りで雪の敷き積もった広い庭を突っ切って、テレジアは西の物見塔の麓まで駆けつける。
 そして高い塔を見上げた。周囲はしん、と静まり返って鳥の羽音すら聞こえない。
 ガウンのポケットから先程の鍵を取り出し、氷のように冷えた錠に差し込んだ。カチリ。金属質な音がして封印が解かれる。古びた扉を全身の力で引っ張り、こじ開けたその隙間に少女は躰を滑り込ませる。
 何処までも続くような螺旋階段を、息を切らして駆け上った。一番初めに昇った時と同じ、不安な気持ちが胸を掠める。
 階段の突き当たりまで辿り着き、テレジアは軋む木の扉をそっと押し開ける。灯りのない部屋は薄暗く、石壁で囲まれた内部は普段より更に冷えて感じられた。中に踏み入ると、床に散らばっていることが多かった数々の分厚い本は、今では全てきちんと書架に整理されている。書きかけの論文が机に積み重ねられていることもなかった。
 そして何より、少し無愛想な表情で自分を迎え入れてくれる彼がいない。
 ――それが一番さみしい。
「おじさま……」
 思わず口に出して呟いていた。留守にするなんて全く聞いていなかった。今までも何度か塔を空けていたことはあったようだけれど、二、三日もすれば必ず帰ってきていた。しかし、わざわざ自分に鍵を託して行くくらいだから、今度の不在は長期に及ぶのだろう。
(行き先も知らせずに発(た)つなんて)
 ひどい、と俯いたテレジアは涙の滲んだ言葉を飲み込む。
 彼女は回転椅子の上に片膝を立てて座り、そこに体重を預けてみる。いつも彼がそうしていたように。
(ひどいわ、おじさま)
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