未完成の言葉の欠片 / ※印は要注意orネタバレ / 二次はクリア後前提です
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2026.04.04 Saturday
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notesより好き嫌いの話
2005.02.03 Thursday
「ごちそうさま」の声と共に脇によけられた皿の上を、目敏く捉えてフレイアが熾己の側に押し戻す。
「だーめ!」
軽い口調の割に彼女の目線は厳しい。しまった、とばかりに熾己が眉を顰めて片頬を歪める。ナイフとフォークがきちんと揃えられた取り皿の上には、鮮やかな緑色をした野菜が数種類残されたままだ。幼い頃から変わらず熾己の苦手なものだと、ヴァルトもフレイアもよく知っている。
ひとつため息をついたフレイアは少し呆れた口調で、まるで聞き分けのない小さな子供に言い含めるように諭し始める。これも、彼らが幼い頃と全く変わらない。
「熾己様、好き嫌いなく食べなきゃ駄目だって、皇妃様がずっとおっしゃっていたでしょう? 折角出されたお皿のものを残すなんて、勿体ないわ」
「嫌いなものは嫌いなんだ。残りはヴァルトが食べるんだから勿体なくもないだろ」
俺、残飯処理係? と、ちらりと寄越された視線を受けてヴァルトは呟いた。まあ確かに、自分の好き嫌いを問わず、熾己には昔から色々なもの――大変苦手な甘味も――を食べさせられたような気もするが。無邪気な表情で目の前にフォークを差し出されては、断りようがない。
しかしそのような屁理屈がフレイアに通用するわけもなく、彼女の叱責は至って容赦のないものだった。
「お医者様がそんなワガママ言うんじゃありません! 栄養分は満遍なく摂り入れないと体に悪いって、熾己様自身がようく御存知のはずでしょう。これではビタミンが足りなくてよ」
自身も医師の彼女は口早に熾己に言って、更にくるりと振り返る。そして対面のヴァルトにビシッ、と人差し指を突きつけた。
「ヴァルト、あなたも!」
「俺?」
思わず自分を指差して訊き返した。どうして怒られるんだ、と眼を瞬く。
「熾己様の健康管理もあなたのお役目のひとつでしょうが! 見て見ぬ振りをしてるんじゃないの! あなた、もしかして今までずっとこの調子だったんじゃないでしょうね。信じられない! 陛下に、こんな男に任せたのは間違いですってご報告しなきゃ」
「だってー、ピーマン食べなくても死ぬわけじゃないし。熾己の機嫌損ねて怒られんのヤだしィ」
「それは単なる甘やかしよ!」
……同じようなフレーズを、ついこの前にも誰かに言われたような気がする。
「わーひどーい。フレイアさんまでそんなこと言うー。第一、熾己ももう小さい子供じゃないんだし、何だって俺がそこまで……」
「お目付け役の任務(おしごと)を疎かにする方が悪いんではなくって?」
つん、と顎を上げて指摘されてしまった。有無を言わせず、相手を反省しなければならないような気分にしてしまうのが、彼女のすごいところだと思う。明らかに見下されているのに逆らえない――というか、正確にはそれが似合うから怖くて刃向かえない。
フレイアは熾己の方に向き直り、再度忠告する。
「と、に、か、く! 偏食は身体によくないし、そもそも食材を育てた人にもお料理を作った人にも失礼です。だからちゃんとお食べなさい」
「失礼とかそういう精神論は」
「お黙り!」
一喝され、びくっと熾己が身を竦める。皇子に対してそこまで言う人間も珍しいだろう。彼はしばらく複雑な表情をして黙っていたが、やがて俯き気味に、観念したように言う。
「……野菜は食べる。生肉と生魚と茸は勘弁して」
「譲歩しましょう」
頷いて、フレイアは笑う。
==================================================
「そういや熾己、何でキノコ駄目なの?」
「だって菌だろ」
「いや冗談じゃなく」
「あの歯応えが……噛んだ時にふにっとする感じがきもちわるい」
「そーう? 美味しいと思うけどなあ」
「だから味じゃなくて。それ以前。わ、思い出したらぞわっとしてきた」
両腕を抱えて、熾己が苦虫を噛み潰したような顔をする。好き嫌いは激しいが、同じくらいに面子(メンツ)もあるので、どう誤魔化しようもない時は一応食べてはいるのだ。例えば家族――特に母親――の前だとか。食べ物を粗末にすると、下手をすれば彼女はフレイアより怖い。
ただ、生の魚や肉のほとんどはどう我慢しても受け付けないので、最初から遠慮するか火を通してもらうことにしている。焼き加減もレアでは無理だ。
「だーめ!」
軽い口調の割に彼女の目線は厳しい。しまった、とばかりに熾己が眉を顰めて片頬を歪める。ナイフとフォークがきちんと揃えられた取り皿の上には、鮮やかな緑色をした野菜が数種類残されたままだ。幼い頃から変わらず熾己の苦手なものだと、ヴァルトもフレイアもよく知っている。
ひとつため息をついたフレイアは少し呆れた口調で、まるで聞き分けのない小さな子供に言い含めるように諭し始める。これも、彼らが幼い頃と全く変わらない。
「熾己様、好き嫌いなく食べなきゃ駄目だって、皇妃様がずっとおっしゃっていたでしょう? 折角出されたお皿のものを残すなんて、勿体ないわ」
「嫌いなものは嫌いなんだ。残りはヴァルトが食べるんだから勿体なくもないだろ」
俺、残飯処理係? と、ちらりと寄越された視線を受けてヴァルトは呟いた。まあ確かに、自分の好き嫌いを問わず、熾己には昔から色々なもの――大変苦手な甘味も――を食べさせられたような気もするが。無邪気な表情で目の前にフォークを差し出されては、断りようがない。
しかしそのような屁理屈がフレイアに通用するわけもなく、彼女の叱責は至って容赦のないものだった。
「お医者様がそんなワガママ言うんじゃありません! 栄養分は満遍なく摂り入れないと体に悪いって、熾己様自身がようく御存知のはずでしょう。これではビタミンが足りなくてよ」
自身も医師の彼女は口早に熾己に言って、更にくるりと振り返る。そして対面のヴァルトにビシッ、と人差し指を突きつけた。
「ヴァルト、あなたも!」
「俺?」
思わず自分を指差して訊き返した。どうして怒られるんだ、と眼を瞬く。
「熾己様の健康管理もあなたのお役目のひとつでしょうが! 見て見ぬ振りをしてるんじゃないの! あなた、もしかして今までずっとこの調子だったんじゃないでしょうね。信じられない! 陛下に、こんな男に任せたのは間違いですってご報告しなきゃ」
「だってー、ピーマン食べなくても死ぬわけじゃないし。熾己の機嫌損ねて怒られんのヤだしィ」
「それは単なる甘やかしよ!」
……同じようなフレーズを、ついこの前にも誰かに言われたような気がする。
「わーひどーい。フレイアさんまでそんなこと言うー。第一、熾己ももう小さい子供じゃないんだし、何だって俺がそこまで……」
「お目付け役の任務(おしごと)を疎かにする方が悪いんではなくって?」
つん、と顎を上げて指摘されてしまった。有無を言わせず、相手を反省しなければならないような気分にしてしまうのが、彼女のすごいところだと思う。明らかに見下されているのに逆らえない――というか、正確にはそれが似合うから怖くて刃向かえない。
フレイアは熾己の方に向き直り、再度忠告する。
「と、に、か、く! 偏食は身体によくないし、そもそも食材を育てた人にもお料理を作った人にも失礼です。だからちゃんとお食べなさい」
「失礼とかそういう精神論は」
「お黙り!」
一喝され、びくっと熾己が身を竦める。皇子に対してそこまで言う人間も珍しいだろう。彼はしばらく複雑な表情をして黙っていたが、やがて俯き気味に、観念したように言う。
「……野菜は食べる。生肉と生魚と茸は勘弁して」
「譲歩しましょう」
頷いて、フレイアは笑う。
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「そういや熾己、何でキノコ駄目なの?」
「だって菌だろ」
「いや冗談じゃなく」
「あの歯応えが……噛んだ時にふにっとする感じがきもちわるい」
「そーう? 美味しいと思うけどなあ」
「だから味じゃなくて。それ以前。わ、思い出したらぞわっとしてきた」
両腕を抱えて、熾己が苦虫を噛み潰したような顔をする。好き嫌いは激しいが、同じくらいに面子(メンツ)もあるので、どう誤魔化しようもない時は一応食べてはいるのだ。例えば家族――特に母親――の前だとか。食べ物を粗末にすると、下手をすれば彼女はフレイアより怖い。
ただ、生の魚や肉のほとんどはどう我慢しても受け付けないので、最初から遠慮するか火を通してもらうことにしている。焼き加減もレアでは無理だ。
姐さん最強。
私はキノコは苦手ですがピーマンは食べられます、よ!熾己の好き嫌いは妹参照です。私の苦手なものも混じってますが。
私はキノコは苦手ですがピーマンは食べられます、よ!熾己の好き嫌いは妹参照です。私の苦手なものも混じってますが。
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