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未完成の言葉の欠片 / ※印は要注意orネタバレ / 二次はクリア後前提です
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05/05/29
「あれえ? 熾己、背が伸びた?」
「それは嫌味か」
「んー? 別に」
「一週間やそこらで目に見えるほど伸びるわけがないだろう!」
「兄君はお二人とも高いのにな」
「前皇妃(ブリュンヒルト)様が背の高い方だったの! それに父上だって身長は平均的だし。だけど、僕の母上はどちらかというと小さい方だから……」
「うん、皇妃様はコンパクトだよね。ミニサイズ。全体的に」
「母上に言いつけるぞ」
「あ、お願い、それだけはやめて。後生だから」
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05/05/28
「アル」
 もうすっかり耳に馴染んだ声。けれど彼は無視を決め込む。
「……アル?」
「そういう風に私をお呼びになる限り、返事はしませんからね」
「主人の命(めい)は聞くものだろう」
「聞けるものと聞けないものがあります」
「それでもオークスか」
「どうせ私は出来損ないなのでいいんです」
万華鏡(3)
 そういう生活が更に三年続いた頃、彼らの前にひとりの訪問者が現れた。
「イルマ・フローエ様のお宅はこちらで宜しいですか?」
 学校帰り、アパートの部屋の前に見知らぬ男が立っていた。鍵を取り出そうとしたユージィンに気付き軽く会釈したのち、号数の表示を手元の小さな紙片と見比べるようにして彼は言う。フロックコートを身に着けた、やけに身なりのいい、落ち着いた初老の紳士だった。言葉遣いも礼儀正しく下町訛りがない。
 
万華鏡(2)
 初めて『父』と呼ぶべき相手ができたのは、基礎学校(グルント・シューレ)の五年に上がった頃のことだ。三十手前の、学者肌を感じさせる男だった。帝都の大学出だというから、頭は良かったのだろう。イルマの働くカフェの常連で、そこで彼女を見初めたらしい。最初は躊躇っていた母も、彼の熱意に絆されてやがて求婚に応じたようだ。母はまだ充分年若かったし、子供がいること以外は特に問題もなかったからだ。
 
万華鏡(1)
 彼が生まれたのは東領(カルディナ)の南端、ベルトラムという名の海沿いの町だった。ちょうど皇帝夫妻に一人目の皇子が誕生し、国中がその祝いに賑わっていた年の秋のことである。
 ベルトラムは南領(ミルザス)に隣接しており、田舎町ではあるが外洋に近く風光明媚な土地柄で知られている。帝国貴族の別荘地としても挙げられるほどだ。とはいえ夏の観光の時期だけ都会から人が訪れる、その他は多少の海産物しか名物のない寂れた小さな町だった。住民の多くは顔見知りで、彼らは夏場には貴族の邸宅で下働きとして仕え、それ以外の季節は畑を耕したり漁に出たりする。
 
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