未完成の言葉の欠片 / ※印は要注意orネタバレ / 二次はクリア後前提です
[PR]
2026.04.04 Saturday
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ということで書いてみました
2004.08.24 Tuesday
「何か珍しいものでもありますか?」
流暢な故郷(くに)の言葉で話し掛けてきたのは、砂色の髪の、長身の青年だった。どう見ても故郷の生まれではない青年から発された言葉は、姿形に対しての違和感はあれど驚くほど自然な発音だ。
伽耶は彼を見上げてふと思う。
(夏旺兄様より少し上くらいだな)
齢は二十代の終わりくらいに見えた。顔立ちは端整と呼べる部類に入るのかもしれない。少なくとも人好きのする、涼やかで優しげな面差しをしていた。
じっと見つめる彼女に青年は首を傾げて言う。
「巫女様の女童(めのわらわ)か何か……」
「いや、わたしが伽耶だが」
伽耶の言葉に青年はほんの一瞬、目を瞠って驚いた表情をした。しかしそれも束の間、跪いて深々と頭を下げる。
「これはとんだ失礼を。心よりお詫び申し上げます。お許し下さい」
「別に構わない」
流暢な故郷(くに)の言葉で話し掛けてきたのは、砂色の髪の、長身の青年だった。どう見ても故郷の生まれではない青年から発された言葉は、姿形に対しての違和感はあれど驚くほど自然な発音だ。
伽耶は彼を見上げてふと思う。
(夏旺兄様より少し上くらいだな)
齢は二十代の終わりくらいに見えた。顔立ちは端整と呼べる部類に入るのかもしれない。少なくとも人好きのする、涼やかで優しげな面差しをしていた。
じっと見つめる彼女に青年は首を傾げて言う。
「巫女様の女童(めのわらわ)か何か……」
「いや、わたしが伽耶だが」
伽耶の言葉に青年はほんの一瞬、目を瞠って驚いた表情をした。しかしそれも束の間、跪いて深々と頭を下げる。
「これはとんだ失礼を。心よりお詫び申し上げます。お許し下さい」
「別に構わない」
04/08/05
2004.08.05 Thursday
「わたくし、変わり者だって言われても別に気にならないわ」
「判る? レージィ、君は僕のところには来ちゃ駄目だって言ってるんだよ」
「おじさま、わたくしは大好きよ、おじさまのこと」
彼は何処か呆れたような、困ったような表情を浮かべて、
「……父君がお怒りにならないうちに早くお帰り、レージィ」
そう静かに言った。
「判る? レージィ、君は僕のところには来ちゃ駄目だって言ってるんだよ」
「おじさま、わたくしは大好きよ、おじさまのこと」
彼は何処か呆れたような、困ったような表情を浮かべて、
「……父君がお怒りにならないうちに早くお帰り、レージィ」
そう静かに言った。
04/05/14
2004.05.14 Friday
「やっぱりここにいた。思った通りだわ」
少女の上げた声に、彼はゆっくりと振り返った。
「……テレジア」
物見の塔の遥か上、見晴らし台の柱に凭れて遠い夜空を眺めていた少年の傍らに、テレジアは駆け寄る。地上の喧騒など我関せずといった面持ちの静かな空気。その中で落ち着いた声に名前を呼ばれ、不意に幼い頃に戻ったような気分になる。長い空白の時間を一時(いちどき)に埋めてしまうような、懐かしさ。
少女の上げた声に、彼はゆっくりと振り返った。
「……テレジア」
物見の塔の遥か上、見晴らし台の柱に凭れて遠い夜空を眺めていた少年の傍らに、テレジアは駆け寄る。地上の喧騒など我関せずといった面持ちの静かな空気。その中で落ち着いた声に名前を呼ばれ、不意に幼い頃に戻ったような気分になる。長い空白の時間を一時(いちどき)に埋めてしまうような、懐かしさ。
04/03/19
2004.03.19 Friday
冬の朝。広い窓の向こうから聞こえてくる、微かな鳥の羽搏き。その音に、少女は穏やかな微睡みの中から意識を呼び戻される。覚醒を促され、ようやく目を覚まして枕から首をもたげると、時計の針は既に七時過ぎを指していた。いつもならばもっと早くに起こしに来るはずの侍女が、今日はまだいない。部屋の中はしん、としていてやけに羽の音と風の音が大きく聞こえた。
明るい朝の光は透明な硝子を通して優しく降り注ぎ、部屋の中の厳しい冷気を打ち消すように暖かく満ちている。陽光が眩しくて思わず目を細める。
少女は上体を起こして、もう一度視線を窓の方へと向けた。
真白い羽。舞い降りたそれは、こつこつ、と嘴(くちばし)で何度も窓硝子を叩く。白く大きな鳥だった。少女が気付いたのが判ったのか、鳥は軽く首を傾げて丸い睛で硝子越しに彼女を見る。しかしそれも束の間、白い鳥は優美に翼を広げて飛び去った。
その際、何かをバルコニーに落としていったことに少女は気付く。寝台から足を下ろし、慌てて彼女は窓を押し開ける。
そこに置かれていたのは一通の手紙。裸足のままバルコニーに出た少女は、そっとそれを拾い上げる。封はされていない。宛名も差出人も書かれていない封筒を、彼女は急いで開いた。
中には一枚の便箋と、古びた鍵が入っていた。
『僕が留守の間、君に預けます。好きに使うといい』
見覚えのある、癖のある字で便箋にはそう綴られている。封筒の口を傾けると、かさり、と音を立てて鈍い金色の鍵が掌の上に滑り出た。少し錆付いた、古い古いもの。あの塔の鍵だ、と一目で判った。気付いてすぐに彼女は踵(きびす)を返す。
明るい朝の光は透明な硝子を通して優しく降り注ぎ、部屋の中の厳しい冷気を打ち消すように暖かく満ちている。陽光が眩しくて思わず目を細める。
少女は上体を起こして、もう一度視線を窓の方へと向けた。
真白い羽。舞い降りたそれは、こつこつ、と嘴(くちばし)で何度も窓硝子を叩く。白く大きな鳥だった。少女が気付いたのが判ったのか、鳥は軽く首を傾げて丸い睛で硝子越しに彼女を見る。しかしそれも束の間、白い鳥は優美に翼を広げて飛び去った。
その際、何かをバルコニーに落としていったことに少女は気付く。寝台から足を下ろし、慌てて彼女は窓を押し開ける。
そこに置かれていたのは一通の手紙。裸足のままバルコニーに出た少女は、そっとそれを拾い上げる。封はされていない。宛名も差出人も書かれていない封筒を、彼女は急いで開いた。
中には一枚の便箋と、古びた鍵が入っていた。
『僕が留守の間、君に預けます。好きに使うといい』
見覚えのある、癖のある字で便箋にはそう綴られている。封筒の口を傾けると、かさり、と音を立てて鈍い金色の鍵が掌の上に滑り出た。少し錆付いた、古い古いもの。あの塔の鍵だ、と一目で判った。気付いてすぐに彼女は踵(きびす)を返す。